狂想曲〜Capriccio〜 Act.4

「おチビちゃん! はい、ファンタ♪」
「どもっす」
「何か他に欲しいものある?」
「……」

 ニコニコと問い掛けると、リョーマは真っ直ぐに英二を指差して、
「エージが欲しい」
「……へ?」
「……ダメ?」
「い、いや、ダメじゃないけど……」


 リョーマの言葉に、真っ赤になって慌てふためく英二を見つつ、リョーマは眉を潜めて、英二の手首を取って引っ張った。

「枕になってって意味だけど?」
「……うぇ?」
 反動で座り込んでいた英二の胸に、リョーマは凭れて英二に貰ったファンとのプルトップを引いて飲み始める。
「……いる?」
 どこか、意気消沈していた英二に苦笑を浮かべつつ、問い掛けると、英二も苦笑を浮かべて、首を振った。
「オレは良いよ。おチビ全部、飲んじゃいな」
「……でも、オレ一人で飲んでたら、何か悪い気がするし……」

 そう言ったリョーマはハッとしたように、目を見開いて。
 ニッコリ笑った。

 ファンタを一口、口に含んで、英二を手招きすると、唇を押し付けて口の中のファンタを英二の口内に流し込んだ。

「……っ!!!?」
「……オイシ?」

 ゴクンと嚥下した後、思い切り首を上下に動かして、頷く英二にリョーマは満足そうに笑った。















「手塚……」
「……部長」
「はっきり言って……目の毒のような気がするんだが……」
「グラウンド罰走ぐらいじゃ、効果ないしな」

 そう、今はテニス部のレギュラー陣強化合宿の真っ最中で。
 しかも、まだ部活中のただの休憩にしか過ぎないのだ。
 どうにも、いつも以上にベタベタと暑苦しい二人に、普段は微笑ましく(?)見守っているレギュラー陣も、さすがに苛々が最高潮に達したらしい(笑)




「……乾」
「何だ?」
「あれは直ぐに用意出来るか?」

 手塚の言う【あれ】が何なのか、直ぐに判ったらしい乾は、メガネを光らせてにんまり笑った。

「ああ、いつでも用意出来るぞ」
「そうか……。――越前! 菊丸!! こっちに来い!!」

 手塚は、離れた木陰でいちゃついてる恋人を呼びつけて――勿論、二人はあからさまに、不満そうな表情をしていた――こう言ったのである。


「強化合宿中、恋愛禁止だ」
「……」
「――?」


 一瞬の間の後。



 盛大に英二が噛み付いた。

「何でーーーー? こんなチャンス滅多にないんだよ? 朝から晩までどころか、
晩から朝までそれこそ、一日中一緒に居られるなんてさ!!」
「……合宿が終わっても幾らでも機会はあるだろう?」
「……そりゃ、そう言う機会も作るけど! でも、こんなタナボタなチャンスを逃すのは
絶対にイヤだね!
「そうか。なら……乾の用意した、あれを飲んで貰おうか?」
「え?」
「はっきり言って、部活中にベタベタされると、こっちが落ち着かない。集中力も欠けるし、良い効果は生まれないからな」
「そうそう。ただでさえ、暑いんだから、これ以上気温を上げないで欲しいんだよね」
「不二……。何だよ、それ?」
「……とにかく! 部内の規律を乱して居るのは、お前たちの方だ。これは当然の結果だと思え」
「横暴! そんなの個人の自由じゃん!」
「――勿論、部活外で何をしようと、お前たちの勝手だ。俺は関知する気はない。だが、部活中であれば、そうはいかない」
「英二。合宿が終われば時間も出来るし。別に別れろって言ってる訳じゃないんだから」
「……」



 パートナーの大石にまで言われて、英二は少しだけ落胆したように目を伏せた。


「――判りました」
「おチビ?」

 英二が驚いたような声を上げて、リョーマを見下ろす。
 だが、リョーマはそれを無視して、不二に視線を向けると、問い掛けた。

「あれ、飲むのはさすがにイヤだし。……で? どこまでが、禁止行為なんですか?」
「……何で、僕に聞くのかな?」
「何となくッス」
「……ふーん。まあ、良いけどね。そうだね……見ててうんざりするような行為は避けて欲しいんだけど」
「あまり過激なのもな」
「人前だってこと、もう少し意識してくれ……」

「恋人としての行為すべてが禁止。普通に、先輩後輩として話をしたりするのは別に構わないよ?」
「……そっすか?」
 リョーマは、不二から英二に視線を向けて、
「要はキスしなきゃいいんじゃない?」
「……ああ、なるほど」
 リョーマの言葉に、英二がニッコリして頷いた。
 そうして、早速リョーマに、抱きついてゴロゴロと懐く英二に、その場にいた全員が同じことを考えた。


 
恋愛禁止にしても意味がねえ!!!



 不二がこめかみを引きつらせながら、手塚に向かって言った。

「ねえ、一層のこと、半径1メートル以内近寄っちゃダメにしようか?」
「えええー?」
「……」
「それもそうだな……」
「何でーー? 別に恋人じゃなくたって、抱き着いたりするじゃん!」
「ここで問題なのは……二人が付き合ってることを皆が知ってるってことだな」
 乾の言葉に、英二とリョーマ以外の面々が頷く。
「何、それ?」
「だから、君たちが抱きついたりしてると、恋人がいちゃついてるだけにしか見えないんだよ?」
「真相を知らない人が見れば、単なる先輩後輩のじゃれ合いにしか見えないだろうがな」


 結局。

 半径一メートル以内に入らないこと。
 恋人同士を、彷彿とさせる会話はしないこと。

 が決められ、破れば乾特製ペナル茶を飲むことが義務付けられてしまった。
 不平不満を言い募る英二とは逆に、リョーマは特に不満を言うでもなく、黙って頷いた。









     ☆    ☆    ☆


「なーんで、おチビは甘んじて受けるかな〜」
「別に……抵抗しても無駄でしょ?」
「そーんなことない! おチビが本気で抵抗して、嫌がって泣いたら、絶対にアイツら譲歩したのに!」

 好き放題に喚き散らす英二に、リョーマは困ったような視線を向けた。

「その前に、あれ飲まされただけっすよ?」
「……あぅ…そうかもだけど! でも……」
「しょうがないじゃないっすか? あれ飲むくらいなら、あの程度の条件飲んだ方がはるかにマシっすからね」
「むぅ〜おチビちゃん、愛が足りないんじゃない?」
「エージは飲めるの?」
「……」
「自分も飲めないくせに、俺にだけ押し付けないでクダサイ」






「英二、越前くん」
 どこか呆れたような口調で割り込まれた声に、英二もリョーマもそちらに視線を向けた。

「何スか? 不二先輩」
「ちゃんと、一メートルくらい離れてるよ!」


 どちらも、これ以上ないくらい、不機嫌な口調で答える。

「それはそうだけど」
「……今の二人のやり取りって、恋人同士の会話に入るんじゃないっすか?」
「桃先輩?」
「……どこが? ハッキリ言って、今の殆ど、口論じゃん!!」
「聞き様によっては単なる痴話喧嘩だよ?」
「……しょうがないじゃん! オレとおチビは、付き合ってんだから、それ前提の話し方になっても!」

「じゃあ、別れようか?」
「なっ!?」
 突拍子のない不二の言葉に、英二が愕然とする。
「別れたつもりになってくれるだけで良いけど?」
 さすがに、リョーマも呆れたようにラケットを肩に引っかけて、うんざりしたような声を出した。

「何で、そこまで拘るんスか? 俺等がどんな話をしていても、聞かなきゃ気にならないでしょ? 見ただけで、いちゃついてるって判る訳じゃないし」
「そうなんだけど……」
「じゃあ、何すか?」
 どこか、困ったように呟く不二に、リョーマは強気に詰め寄った。
 不二は大きく息をついて、首を振りながら……。











「AコートとBコートで、そんな大きな声で話されたらね」
「嫌でも耳につくに決まってんじゃねえか!」
 不二の言葉を受けて桃城が言い、リョーマと英二は互いに顔を見合わせた。




「……でも、一メートル以上離れてますよ? エージにだって触れても居ない」
「とりあえず、一杯飲もうか?
 気を取り直して条件を提示するリョーマに、不二はニッコリ笑って言った。
「………………半分、脅迫ッスよね?」
「……そう取って貰っても構わないよ?」
 滅多にないほど低い声で問い掛けて来るリョーマに、不二はうっすらと目を開けて言った。
 そんな不二を見て、リョーマは、盛大に溜息をついて、首を振った。

「走って来ますんで、それは勘弁してクダサイ」
「……あ、じゃあ、オレも……」
 コートを出て行こうとするリョーマについて、英二もコートを出ようとすると、リョーマが振り返って鋭く言った。
「エージは……エージ先輩は来なくて良いッス」
「……え?」
「んじゃ、行って来ます」

 一人で校庭に向うリョーマに、英二はキョトンとして、それを見送った。

「馬鹿だね〜二人で走ったら、今度こそ本当にあれを飲まなきゃいけなくなるかも知れないじゃない?」
「……え?」
「だから、越前くん。自分だけで走ることで、英二から離れて、あれを飲まなくて良い状況を作ったんだよ」
 不二はそう言って、踵を返した。





「英二! フォーメーション練習に入るぞ!」
「……う、うん」
 大石の声に、英二が曖昧に頷いた。





 グラウンドを走るリョーマの姿が、何だか痛くて……。

 そうして、思い知る。





 自分がどうしようもないくらい、リョーマを好きなことを……。












    ☆   ☆   ☆



 部活終了の合図が出た瞬間。
 英二が、嬉しそうにリョーマに駆け寄って行こうとしたら、いきなりウェアの首根っこを掴まれて引き止められた。

「何? 不二。練習終わったじゃん」
「手塚の言ったこと。聞いてなかった?」
「……は?」
「強化合宿中、恋愛禁止」
「……って、ええー? 練習終わっても、おチビと話しちゃダメなの?」
「当たり前でしょ? 会えない訳じゃないし。たった一週間だよ?」
「……」

 不二はあっさりと言ってくれたけど、英二は諦め切れないようにリョーマの方に視線を向けて見た。
 だが、当のリョーマは、桃城と楽しそうに話をしている(ように見える)












 こんなことで、ぐらつく自分が情けないと思う。
 ついこの間。

 自分たちの気持ちは確認しあって、迷いも不安も消えたと思ったのに。
 昨日は、念願のデートを無事に果たせて嬉しかったし、今日もあの瞬間までは、本当に満ち足りていた。







 なのに。
 ろくに話も出来ない状態になったのに。
 リョーマは平然としている。

 
 自分だけが……。
 イライラして、困惑して、戸惑って……。
 そして、淋しい気持ちになってる気がして、気持ちが沈んでいくのが判った。


(おチビちゃんは、何ともないのかな? オレと話出来なくても。……一緒に居られなくても)

 


 小さく溜息をついて、先に部室へとゆっくりと歩き出した。









      ☆   ☆   ☆




 合宿所に設えられている大浴場でそれぞれ、汗を流した後。
 7時から食事を取り、8時からミーティングが行われた。


 そうして、9時から11時まで自由時間となった。

 娯楽室には大型のテレビがあり、部員の殆どは、そこでテレビを見ている。
 ご多分に漏れず、リョーマも桃城と並んで座って、テレビを見て笑っていた。
 本当なら……英二自身もそこにいて、リョーマやみんなとテレビを楽しんでいたと思うのに。
 英二は娯楽室からそっと外に出て、深く溜息をついた。





 楽しくない。

 気持ちが高揚しないのが、手に取るように判る。



「……オレ、どうかしてるよ」


 小さく呟いて、合宿所の外に向う。


「あれ? 英二、どこ行くの?」
「……不二には関係ないよ」
「ほんの少し話せないだけで、不安になるの?」
「……」
「越前は、直ぐ傍にいるじゃない。……周りが何を言っても、越前が選んだのは君なのに?」
「……っ」
「これ以上、君は何を望むの?

 そう言って、不二はゆっくりした足取りで娯楽室の方に歩いて行く。




 不二の言葉が。
 ゆっくりと自分の中に浸透していく。






 
越前は直ぐ傍にいるじゃない。

 周りが何を言っても、越前が選んだのは君なのに?


 これ以上、君は何を望むの?













 強くなりすぎた独占欲。

 独り占めしたくて。
 独り占めされたくて。





「こんなんじゃ……
ダメだって……判ってるのに!!





 軽い足音に。


 英二はハッとして振り返った。



「おチビちゃん」
「……別れましょうか?」
「……っ!」
「付き合ってるから、苦しいんスよ? ただの先輩後輩に戻れば、少しは楽になれるんじゃないっすか?」
「……リョーマは、それでいいの?」
「……エージ先輩が……辛いんでしょう?」
「……っ!」


 愕然とした。
 何で、この子はこんな時に、オレのことを引き合いに出して来るんだろう?

「オレのことじゃない!! リョーマは、オレと別れて平気なのっ!?」
「平気? 何でそう思うんスか?」
「だって! 今日だって、不二たちの提案あっさり受け入れて、それに、ずっとオレと話も出来ない状態になったのに、桃と楽しそうにしてるし!!」
「……もし、オレがエージと別れて平気だと……エージがそう思うんなら……本当に別れた方が良いかもね」
「……っ!」
「エージは……オレの何を見てるの?」

 リョーマはそう言って、踵を返して宿舎へと歩き出した。




「ねえ、別れるの?」
「……エージが望むなら」
「……それが、リョーマの望み?」
「……そっすね」
「もう……オレとおチビは、恋人じゃないの?」
「そっすね」




 何で、そんなにあっさりしてるの?
 一昨日のあれは、何だったの?


 すり抜けて行く大事なもの。
 まるで一生懸命掬った水が、その両手から溺れ落ちるように……。
















「オレは、望んでない!!!」



 リョーマが、宿舎に入る直前に。


 そう叫んでいた。



「……エージ?」
「オレは、一度もそんなこと、望んでないよ! 何で、勝手に決め付けるんだよ!?」

 ビックリしたように振り返るリョーマに英二が、強く言い募る。

「こんなんじゃ……ダメって言ったじゃない」
「……」
「ずっと、苦しそうにしてるじゃないっすか!」
「……リョーマ」
「そんなエージは見たくないんだよ!! オレの一言一言に、喜んだり落ち込んだり……。それじゃ、まるでオレがエージを苦しめてるみたいじゃないっすか!」

「そうだよ! 
全部、リョーマのせいだよ!! 嬉しいのも楽しいのも、苦しいのも辛いのも!!! オレの感情全部、リョーマに支配されてるんだよ!!」

「……それが、ダメだって言うんでしょ? 
だったら、オレと離れるしかないじゃない!!」
「オレは……オレはただ、
リョーマにもそう思って欲しかっただけだよ! リョーマの感情……全部オレが支配したいと思ったんだよ!! だけど……そんなのオレの我が侭じゃないか!!」
「……っ!」






 荒く息をついて、身体を二つに折り曲げる。
 膝に手をついて、肩を震わせて。
 
 その場にしゃがみ込んだ。



「こんな独占欲……リョーマに押し付けたくないのに……。リョーマをオレだけのものしたいなんて……」

 小さく呟いて、唇を噛み締める。

「馬鹿じゃない」


 耳朶を打つ、信じられない言葉に、英二は弾かれたように顔を上げた。

「……リョーマ?」
「馬鹿も馬鹿、大馬鹿」
「……わ、悪かったな! 自分でも変だって思ってるよ! リョーマはそこにいるのに、すっごく遠くに感じて、勝手に疎外感感じて、寂しくなって……」
「ホント、馬鹿っすね。もう、とっくにそうなってるのに、何で気付かないの?」
「……………………え?」
 
 更に信じられないことを聞いたような気がして、間抜けなほどにボーッとして、どこか間の抜けた問いかけをしていた。


「エージと同じ言葉を、ソックリそのまま返してもいい?」
「……え?」
「……オレの感情、全部エージに支配されてる……。楽しいことも嬉しいことも、辛いことも苦しいことも……全部、エージがいるから……今まで感じてた以上に感じてるんだけど?」
「……リョーマ?」

「オレはエージほど、喜怒哀楽を表わせないから……判り辛いかもだけど」
「……」
「でも、オレだって……エージが、不二先輩や大石先輩たちと楽しそうにしてるのを見てると、寂しくなるし、疎外感感じるっすよ?」
「……」
「オレ達、同じことで悩んで怖がって寂しがって、辛がってるんだって……この間確認したじゃないっすか?」
「……あ。う、うん」
「でも、エージはそれが、もう嫌なのかと思った……。そうやって、苦しい思いをするのが……嫌になったんだと……思ったんだ」
「……嫌じゃない! ……嫌なのは、おチビと一緒にいられないことの方だよ……」


 リョーマは膝を付く英二の傍に寄って、その前にしゃがみ込んだ。

「……おチビと一緒にいない楽さよりも……おチビと一緒にいる苦しさを選ぶよ? それぐらい、オレはおチビが好きなんだ」
「……うん。オレも……一緒だよ? エージ」

 リョーマの言葉に、英二は泣き笑いの表情で、手を上げた。
 そっと、リョーマの肩に触れて、ゆっくりとその腕に閉じ込める。






「好きだよ?」
「……オレも好きっすよ?」
「……気持ちは一緒?」
「そうっすね」
「合宿、終わったら……二人で遊び行こう?」
「……良いっすよ」
「じゃあ……合宿の間は、ただの先輩後輩で」
「みんなに迷惑かけないように?」
「うん。そう……みんな……いつもオレ達のこと応援してくれてるから……」
「そうっすね」

 次に触れ合うのは一週間後だと約束して。


 二人は唇を重ねた。




















「要するに……」
 娯楽室の窓から外を眺めながら、不二が言う。
「こう言う障害があればあるほど、絆強く深まって行くもんなんだよ?」
「……自己完結しがちな英二には、いい薬かもな」
「だよね。でも……」
「ん?」
「実際、何やってるんだろうって思うこともあるけどね」
「……結局のところ」
 隣に立つ大石が苦笑して、腰に手を付き、溜息混じり呟いた。

「……越前のことも英二のことも、好きなんだよ、オレ達は……」
「……そうだね」

 不二も苦笑を浮かべて、同意して。

 そっとカーテンを閉めた。










    ☆   ☆   ☆


「菊丸、越前。とりあえず、校庭20周」

 翌朝。
 いきなり告げられた手塚の言葉に、英二とリョーマは顔を見合わせた。
「は?」
「何で?」
「それとも、あっちを飲む方が良いか?」
 手塚が指差す方向に、乾が嬉々としてジョッキに入った【例のもの】を掲げて見せる。


「「……走って来ます」」

 二人声を揃えて、校庭に向かって駆け出した。


「やっぱ、昨夜のばれてるよな」
「そりゃ……あれだけ大声で喚けば、合宿所全体に聞こえたでしょうね」
「……人事みたいに……」
「……」
 不意に黙り込んだリョーマに、英二はキョトンと視線を向けた。

「どした? おチビ」
「……まさか……」
「え?」
「……昨日のあれ、不二先輩にビデオとか撮られてないっすよね?」
 押し殺したようなリョーマの台詞に、英二の顔面が蒼白になり、次に真っ赤になった。






 思わず同時にコート内を振り返る。


 偶然か、不二がこちらに視線を向けてニッコリ笑って。
 その手に小さなビデオテープが握られているのを見て、思わず二人同時に叫んでいた。



「「不二(先輩)〜〜〜!!!!」」



 

「後で、みんなで見ようね♪ 英二と越前くんのメロドラマ♪」



 にこやかな声で告げられて、英二もリョーマもにわかに焦りを見せ、二度と【部活中にはいちゃつかない】と心に決めたらしい。





 人に見せ付けるのは大いに結構だが、自分で顧みたくはないと、リョーマはつくづく油断ならぬ天才の言動に警戒心を募らせるのだった。






余談。

英二とリョーマはそれぞれ、乾特製汁を飲むことで、そのビデオテープを回収したらしい。
その日は勿論、二人とも練習にはならなかったとか。(笑)
☆……☆


何で、いつもギャグ落ちになるのかな〜?
狂想曲ってシリアスで始まって、ギャグで落ちてません?
あ、2話は違ったね。
良かったVvv

ぢゃじゃなくて!
ごめんなさい。
もう、訳が判ってません;;

何か似たような話で、
しかも同じようなことでのめってる英二がなんともはや……(滝汗)

不二先輩、わざと邪魔してるんでしょうかね?
二人の絆を強くするため?
うちの不二先輩は、黒いんだか白いんだかグレー何だか判りません;;

でも、絶対楽しんでる。
それだけは確実☆

本当に変てこな話で申し訳なく……。
ではでは、これにて……(脱兎)