安らかな眠りの中で


「ハックション!」

 何度目かのクシャミで、シャーペンを走らせていた英二が、視線を向けて来た。
「おチビ、風邪?」
「……かもね。誰かさんのせいで、早朝から起こされたし」
「……それ、条件オレも同じなんだけど?」
「エージ先輩の場合は、自業自得。自分で撒いた種じゃん」
「エアコン入れようか?」
「……エアコン入れたら眠くなるって言ったの、エージ先輩っしょ」
「あーまあ、そうだけど。じゃあ、ベッド入って、布団の中、入っときなよ」
「……そしたら、ゲーム出来ない……」
 リョーマは自分の持つコントローラーのボタンを器用に押しながら、反論してきた。

 今現在、英二の部屋で、英二は勉強、リョーマはテレビゲームをしていると言う構図である。

「……うーもう! ちょっと待ってて」
 英二はそう言って、部屋を出て行くと、どこだかに行ってしまい、リョーマはもう一度クシャミした。



「おまたへ〜おチビ!」
 そう言って、英二が持って来たのはコタツだった。
 本来、この部屋にはコタツは置かないのだが、まだ使っていない一番小さなコタツを拝借してきたと言う。
「……」
 コタツ布団は薄手だが、被せてコタツのスイッチを入れれば十分に暖かい。
「どったの、おチビ?」
「何でもないッス」
 呟いて、一時停止していたゲームを再開する。
 首を傾げながら、英二は机に戻って、勉強を再開した。



「あれ?」
 不意に、同じメロディしか流れて来ないことに気付いて、英二はそっと振り返って、目を瞠った。
 コタツのテーブルに突っ伏して、コントローラーを床に投げ出し、リョーマはグッスリ眠っている。

「ありゃりゃ……」
 いつから眠っていたのか、もう、判らないのだが、リョーマは小さくクシャミをした。
 それで、目を覚まさないリョーマに、英二は首を傾げた。
「おチビ。こんなとこで寝てたら風邪引くよ?」
「……う、ん……」
 寝惚けたような声を漏らして、だが、一向に目覚めないリョーマに、英二は苦笑を浮かべてしまう。
 テレビのスイッチを消して、ゲームの電源を落とし、コタツを片付けて、リョーマ用の布団を改めて敷き直した。
 自分の上掛けの布団と毛布をベッドから引き摺り下ろして、リョーマにかけると、リョーマは毛布を抱き締めるようにして、寝返りを打った。

「エージ……」
「……へ?」
 小さく呟かれた自分の名前。
 だが、続いた言葉に、やっぱり苦笑を浮かべて、その頭を撫でると、英二はもう一度、自分の机に座って、勉強を始めたのだった。



「エージ…………………………バーカ……。
デモ、スキ……



<一生やってろコノヤロ……;;>


※寝起き……良いんじゃなかったか?(滝汗)