氷の上にて
作: 麻梨さま 放課後の練習を終えて、レギュラー全員は何故か同じ時間に校門を出ようとしていた。 昨夜降った雪が溶けていない道路の端。 アスファルトの上の雪は気温の上がらなかった日中のせいで、凍っていた。 前にいる菊丸や桃城たちの笑い声を聞きながら。 不二は歩いていた。 特に足元に気をつけていたわけではないけれど。 できることなら、転ばないようにと思う程度の速度で。 それでも・・・。 滑る時は、突然で。 足元が不自然に滑って、前に倒れそうになる。 「・・・え?」 いつも思うのは、こんな時でも冷静でいられる自分が不思議だということ。 前にいる菊丸や桃城たちのように、騒いで慌てて大げさに転んでみれたらいいのに。 そうしたら、きっと自分を見てくれるだろうし。 それに。 転びそうになるのを、助けてくれるかもしれない。 何も言わずに、そっと。 あんな彼氏でも。 このまま行けば前にいる菊丸の背中にぶつかってしまうだろう。 そうなればまだ良い方で、もしかしたら顔面から倒れてしまうかもしれない。 倒れる直前、空いた足が滑った足の前に出たのはいいけれど。 今度は反対に背中から倒れそうになる。 「・・・うそ・・・」 落ちついて行動していても。 時々こんなことがおこるものだ。 もう、助からない。 きっと強く体を打ちつけてしまうかもしれない。 氷やアスファルトの上に。 そんなことをいろいろ考えていても体は倒れていって。 諦めかけた、その時。 背中に大きな手、らしきものがドンと当たった。 それは抱えるように腰を掴んだかと思えば、引き寄せられる。 これで、安心と両足を地面に置いた時。 「・・・大丈夫か?」 引き寄せられたその少し上から、少し低めの声がして。 そっと見上げれば、視線は前を向いたままの手塚の顔のアップがあった。 「手塚?」 「よく滑るからな。気をつけろ」 ぶっきらぼうに言う言葉だけれど、そこからも優しさが含まれていて。 そんなニュアンスが分かるのは自分くらいかな、なんて思ってみたり。 「うん。ありがとう」 「ああ・・・」 変わらず前を向いている手塚は、きっと照れ隠しなのだろう。 表情を変えることはない。 だけど、ずっと腰に添えられている手を離さないのは。 手塚の優しさ。 その温もりがあったかくて。 不二もそのまま、手塚に寄り添って歩いた。 こうしていれば、転ぶこともないし。 転んだとしても。 きっと助けてくれるから。 ステキな僕の彼氏が・・・。 |
☆謝辞☆ |
『cinderella dance』の麻梨さまが、ウチのサイトのTOP絵初塚不二を見て書いて下さったお話です☆ もうUPを迷ったことさえ忘れはて、狂喜乱舞してしまったのは、私です(^^ゞ こう言う感じに書きたくてでも挫折したものだったので、本当にイメージ通りでビックリしつつ嬉しくてしょうがないのです。 本当に本当にありがとうございました! 麻梨さまのサイトは>>『cinderella dance』 です☆ |