get back into a good mood
作:水無瀬 鮎さま




 あー、疲れた……何で図書委員ってこんなに仕事とか多いんだろ。
 早く部活に行きたいのにまた整頓とか何とかって……。

 あんまり遅くなると絶対に部長に走らされるのは決まってる。
 早く着替えてコートに行かなきゃ………。









「うぃーっす」

 着替えを済ませて急いでコートまで走って行くとコートの中が騒がしかった。
 やけに人が多くて、しかも中には明らかに部外者…というより中学生じゃない人が何人もいて2・3年の先輩達と話をしていた。

 オレは入口のところでフェンスに背を凭れかけていた不二先輩に軽く頭を下げて挨拶すると不二先輩も返してくれて、そのままコートの中に入って先輩の隣にオレも凭れかけるよにして立った。

「今日は遅かったね」
「図書委員の仕事があったんスよ……」

 そうして被っていた帽子を深く被りなおして言う。

「……あの人だかりは何なんスか?」

 そう言ってオレはコート内に出来ている人だかりを指差して不二先輩に聞くと不二先輩はあぁ、と言ってオレが指をさしている方向を見た。

「僕たちのひとつ上の高等部の先輩方だよ、今日はこっちに後輩の指導しに来てくれたらしいよ」
「ふーん……」

 高等部の先輩……ね。
 興味無さそうに人だかりを見ていると大勢の人の中にぴょこんと跳ねた赤い髪の毛が見えて、それが自分の恋人のものだと解ってオレは不二先輩に一言声をかけるとその人のいるところまで歩き出した。

 後で不二先輩が苦笑しながら手を振っているのがわかった。






 人だかりの側まで行くとお目当ての人物……先輩とか言う人と話しているエージに声をかけようとしたけど


「菊丸先輩」

 周りの会話の声が絶え間なく繰り返されていてエージも先輩と話すのに夢中になってるみたいでオレが何度名前を呼んでも全然気づいてくれない。
 オレの身長がエージよりも20cmも低いせいでエージの視界に入ることも出来ないのが辛いかもしれない。
 他の先輩達が大きいせいでオレなんか埋もれてるみたいになってるし。
 それでもいつものエージならどんなにオレが小さな声で呼んでもすぐに気づいてくれて「おチビv」って呼んで抱きついてきたりするのに……。


 先輩と話してるエージは凄く楽しそうで、一緒に話してる大石先輩も交えてオレの解らないをしている。

「菊丸先輩!!!」

 今度は大きな声で叫ぶように呼んでみたけどそれでもエージはオレに全く気づかない。

 未だに喋ってるエージを見てたら無償に腹が立った。
 何でオレが呼んでるのに気づいてくれないわけ!!??

 腹が立ってそれ以上エージを呼ぶのも嫌になってそのまま踵を返してさっきまで居た不二先輩のところまで戻って行くと苛立ち任せに座り込んだ。
 戻って来たオレに不二先輩は不思議そうな表情で見てきたけどオレは何も言わずにその場に座ってエージをじーっと睨み付けるように見る。

「何かあったの?」
「………別に」

 どうしたのかと聞いてくる不二先輩に何でもないと言ったけど、実際心中では凄いむかついてる。
 オレが何度も呼んでるのに全然気づいてくれないことも、オレの知らない人と楽しそうに話してるのも見てるだけで苛立ってくる。

「英二が何かしたの?」
「何でもないっス!!!!」

 不二先輩と言葉を交わしてる間もオレはずっと目でエージを追っていた。
 オレが見てるとエージは気づいてくれた。
 何で今日は気づいてくれないのさ………っ。

「焼もち……?」
 不二先輩が顎に手をあてて考え込むようなポーズを取って首をかしげながら小さい声で呟くとオレの耳に入ったその言葉にオレはびくんと肩を震えさせて反応した。

 焼もち………?

 オレが……?

 顔を勢いよく上げて隣に立っていた不二先輩を見上げると、不二先輩はにっこりと笑顔でオレのことを見下ろすように見ていた。
 驚いたような表情で不二先輩を見ていると不二先輩はオレの横に一緒に座り込んで真っ直ぐに英二が立っているところに視線を移した。

「英二が楽しそうに話してるのに苛立ってるんじゃない?」
「…………っ!?」

 不二先輩の言葉にオレは言葉を失って口を閉ざした。
 何でこの先輩オレの考えてたこと解るわけ!?相変わらず読めないというか何と言うか不思議な先輩だよね……。

「さっきからずっと越前君は英二に声をかけてるのに、当の英二は全く気づかずに先輩と話してて、それに苛立ってるんでしょ?」
「何で………」
「さぁ?」

 くすくすと笑いながら驚いてるオレにとぼけたような調子で言ってくる不二先輩の考えてる事は全然読めない。

 でも言ってることは当たってるかも………。

 全然オレのことに気づきもしないエージに苛立ってるのも本当だけど、どうも他の人に指摘されるとそれすらもムカツク。

 眉間に眉をよせて露骨に嫌そうな表情をすると不二先輩はまたくすくすと笑い出してそれにオレはまたむっとしてしまう。
 笑い続けてる不二先輩を放っておくことにしてオレはもう一度コートの先に居るエージへと目線を移した。

 相変わらず笑顔を絶やすことはせずに先輩とか言う人と話してて、しまいにはその先輩に抱きついたりして………。




 
すっげームカツク。




 一気に機嫌を急降下させてすーっと顔から表情を消し去ったところで部長の練習を始める合図がかかった。
 その合図と不二先輩に促されて練習メニューに入る。

 エージも部長の合図と同時に大石先輩たちとコートに入ってダブルスの練習を開始し始めた。

 高等部の先輩相手に練習をしているのを自分の練習の合間に横目で見ると一瞬目があったけどオレはすぐにエージから目を反らした。
 オレが目を反らしたのにエージはきょとんと不思議そうな表情をしていたけどすぐに元の練習に集中し出した。


 それからは一回もエージと目が合うことはなかった………というか、オレがエージを見ないようにしていた。


 エージとオレの知らない先輩が一緒にいるところを見て苛立つ自分が居たから……。
 結局オレは練習が終るまでエージと会話を交わすことは無かった。












「お疲れっした!!!」
「お疲れ様」

 全ての練習メニューを終えて部員皆が着替えをしている部室の中でもエージはずっと先輩と話していて全然オレに話しかけてこない。

 時間が経つにつれてオレの機嫌はどんどん下降していってるのが自分で解る。

 着替えを済ませた部員達が次々と残っている先輩とかに挨拶をしながら部室を後にしていく中既に着替え終わっていたオレだけど、エージがまだ着替えてなかったからベンチに座って待っていた。

「越前君、帰らないの?」
 上から降ってきた声に俯けていた顔を上げるとそこには制服に着替えを済ませていて肩にテニスバッグをかけて帰宅準備を終えている不二先輩が立っていた。

「………っス」
「英二待ってるのかな?」

 不二先輩の言葉にオレは無言のまま頷くと不二先輩はそっかと言ってオレの隣に腰かけた。

「練習の時から機嫌悪そうだね」
「……そんなこと無いっス」
 否定の言葉を口にするけど自分でもわかるくらいに凄く不機嫌だってのが解る。
 でもこの先輩に言われると思わず否定したくなっちゃうんだよね。

 にしてもエージもいい加減話すのやめて帰ろうよ。

「えー、先輩まじで奢ってくれんの!?」

 急に大きな声が室内に響き渡ったかと思えば、声の主のエージは目を輝かせながら一人の先輩に今にも抱きつかんという勢いで詰め寄っていた。

「あぁ、たまには可愛い後輩に奢ってやるよ」
「いやった〜〜〜〜〜ぁい♪」
 飛び跳ねながらエージはその先輩に抱きついて振り回さんとばかりに嬉しそうにしていて早々に着替えを済ませるとラケットバッグを肩にかけていそいそと先輩の手をとって部室から出て行こうとする。

「んじゃ、皆お疲れ〜!まった明日〜〜〜♪」
 出口のところで手を中に向かってヒラヒラと振って鼻歌を歌いながら出て行く。

 何……何やってるのさエージ………!!!

「行っちゃったね……英二の奴」
「……………」

 隣で呟いた不二先輩の言葉は、オレの耳には遠くで言ってるようにしか聞こえなくて、オレはただエージが出て行った扉を手のひらをぎゅっと力いっぱい握り締めて、睨みつけるように見た。

 
エージのばかっっ!!!!何で帰ってるのさ!!

 オレがエージ着替え終わるの待ってるってのに何も言わないで帰るってどういうことなんだよ……!?

 一言も声をかけてこないどころか先に帰るなんて何考えてるのさ……っっ。

 目じりが熱くなって涙を浮かべているのを感じたけどそれでも泣くなんてオレのプライドが許さないから流れ落ちるのだけは必死に堪えていた。

 そんなオレの様子を隣に座っていた不二先輩は珍しく目を大きく見開いて見ていた。

 まだ部室の中に残っていた他の部長とか先輩もオレの様子に気づいてこっちを見てくるけどオレにはそんな視線を気にしてる余裕は無かった。




 
エージなんか大っ嫌いっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!


















 翌日。


 普段通りに朝には練習があるからオレは朝食を取ると家を後にした。

 珍しく今日はちゃんと起きれた……というか、ほとんど寝てないに近い状態なんだけど。

 昨日家に帰ったオレはすぐに経に閉じこもり夕食も取らずにベッドに潜り込んでカルピンを抱きながら半分拗ねた様子で目を閉じた。

 布団の中に入っていたけどなかなか眠れなくて寝付けたときには既に朝方近くだった。
 夜にエージから電話がかかってくるかと思って携帯を枕元に置いておいたけど着信音が鳴ることは無かった……。
 昨日全然言葉を交わしていないのに、エージからは電話の一つもかかってこない。
 ムカツイて怒ってたけど、それでも電話の一本かけてきてくれたら許してあげようと思っていたのに、それすら無いのに今のオレは不機嫌を通り越してエージへの怒りしかなかった。





 学校に着いてジャージに着替えるとラケットを片手にコートへと向かう。
 するとコートの目の前で後からこっちに向かって走ってくる足音が聞こえた。

「おっチビちゃん、おっはよ〜〜ん!!!!」

 そう言いながらオレに向かって駆けてきた不機嫌の原因の人物はもの凄い勢いで後からオレの背中に抱きついてきた。

「う〜ん、今日もおチビは可愛いにゃぁ♪」
 抱きついたままオレの肩に両腕を回して頭に頬を摺り寄せるようにして来るエージの手を振り払うと振り向いてエージの顔を見ることなくすたすたとコートの中へと入って行く。

「おチビ……?」
 後から不思議そうな声が聞こえてきたけど無視してやった。




「英二」
「あ、大石おはよ〜。ね、おチビどうかしたのかにゃ?」
「………解らないのか?」
「ぜーんぜん、オレ何かした?」
「………自業自得だな、よく考えてみろ」
「えぇ〜〜!何だよそれーー!!!」

 昨日の帰りの部室でのリョーマの様子を見ていた大石は、菊丸の言動に呆れ帰ると同時にリョーマ肩を持つように菊丸にため息交じりで言うと、菊丸の横を通り過ぎてコートの中へと入って行った。








「ねー、おチビってば〜」
 朝の練習は尽くオレがエージを無視しまくって終った。

 授業が始まってからの休み時間毎にもエージはオレの教室まで足を運んできたけどそのエージの行動を大体予測していたオレは授業終了のチャイムが鳴ると同時に教室から出て本鈴ぎりぎりまで戻ってこなかった。

 そして放課後になって練習が始まったにも関わらずエージはオレの周りをうろちょろして話し掛けてくる。
 エージが話しかけてくる度にオレの機嫌はどんどん下がっていって、きっとむすっとした顔でもしてるんだろうな。


「オレ何か怒らせるようなことした??」
 全く自分が何をしたか気づいてない様子はオレの怒りを煽るものでしかなくて、不思議そうに聞いて来るのを耳にする度に苛立ちは大きくなって行く。

「おチビってば〜〜!!!」
「越前君」

 いい加減本気でキレそうになったところでふいに前の方から声をかけられた。
「何スか……」
「適当に組んでラリーだって」
「おチビ!一緒にラリーやろ!!!」
 不二先輩の言葉にエージはオレに抱きついてきてオレは思わず前かがみになって倒れそうになるのを堪えた。

「ね、おチビ♪」
「………不二先輩、一緒にラリーしませんか?」
 エージの言葉を無視して背中に抱きついてるエージの体を引き剥がすと不二先輩のもとまで早足で寄って行く。

「ん?別に構わないけど……"アレ"はいいのかな」
 "アレ"とまで言われたエージを指差して不二先輩はオレに聞いて来るけどその言葉にオレは別にいいっスと言うとそのまま不二先輩と一緒に近くのコートに入ろうとする。

「ちょ……おチビ待てよ!!オレ一緒にやろって言ってるのに何で不二としようって言うわけ!!??」

 後から大きな声で叫んでコート内に入ろうとしたオレの腕を掴んで無理矢理自分の方を向かせたエージの顔を見ないように俯かせるとエージは被っていた帽子を取り去って怒ったような表情でオレを見ていた。

「帽子……返してください」
「何で無視するのか教えてくれたら返したげる」
「……じゃ、返さなくていいです」

 何か言うくらいなら帽子はどうでもいいと思ってそう言って振り返ってコートに戻ろうとするとまた後から引き止められた。

「にゃんで…?にゃんで無視するのさ、オレ何かした?」
 オレに向けられるエージの表情は今にも泣き出しそうな感じと、怒りとが入り混じっていてその目にオレは目を伏せてしまう。

「………オレに気づかなかったクセに……」
「え……」
「昨日、オレがどれだけ名前を呼んでもちっとも気づいてくれなかったクセに!!!」

 オレはもう言葉を押さえることが出来なくなっていた。

 昨日からずっと抱え込んでいた言葉が次から次へと飛び出てきて……。

「オレの知らない先輩とずっと話してて……しかも、いつも一緒に帰ってるのに何で先にその先輩と帰るのさ!!一言も言わないで待ってたオレに何も言わないで……っ」
 目からは止まることなく冷たいものが頬を伝って流れ落ちてるのが解るけどオレにはそれを止めることはできなくてただ流し続けて、エージに向かって叫んだ。

 コートに居る奴らの注目がオレたちの方に集まってきていたけど、そんなの気にしてる程の余裕は今のオレにはなかった。

 肩を震えさせながら言いたいことを言ってしまったオレはぐいっとジャージの袖で涙を拭うと不二先輩の待ってるところまで駆けて行く。

「越前君、大丈夫……?」
「……平気っス、ラリーやりましょ」

 不二先輩の顔もまともに見ることが出来なくて反対側のコートに移動しようとしたところで不二先輩に抱き寄せられる。

「ふ……じ先輩…っ!?」
「ねぇ、英二……」

 不二先輩の腕の中に収まる形になったオレをそのままに、側で立ったままだったエージに向かって口を開いた。

「何で昨日、越前君を放っておいたの?」
「不二……」
「何度も何度も越前君は英二のこと呼んでたんだよ?帰りだって英二が着替え終わるの待ってたのに英二は先輩方と一緒に帰っちゃったよね」

 エージに向かって言葉を紡ぐ不二先輩の声は今まで聞いた事の無いくらいに冷めていてオレでも普段と違うその声色にぞっと寒気を覚えた。

「そりゃ、久し振りに先輩方に会えて嬉しかった気持ちも解るけど、好きな子の声にすら気づかないなんて最低だと思わない?好きな子の不機嫌な理由にすら気づかないなんて"恋人失格"だよ」

 不二先輩に抱き締められたまま不二先輩のジャージに顔を埋めていたオレにはその時のエージの表情を窺うことは出来なかった。

「………ご免、リョーマ………」

 エージの言葉にオレは埋めていた顔を静かに上げるとそこには頭を下げているエージの姿があった。

「エー……」
「気付かなくてご免……リョーマの声に気付かないなんて、オレどうかしてる」
 頭を下げたままでエージは言う。

 オレはそんなエージの姿に何も言えずにただ見ているだけだった。

「誰の声よりもリョーマの声だけには反応しなきゃダメなのにね……。ちょっとオレ浮かれてたみたい……ってそんなの言い訳にしかならないんだけどさ」

 そのエージの声は涙混じりの声に聞こえてオレは不二先輩の腕から抜け出すとエージのもとに駆け寄って行った。

「エージ!!」

 エージの身体に飛びつくように抱きつくとエージは油断していたせいでそのまま後に倒れこんでオレはエージの上に乗りかかるようにして一緒に倒れた。

「ってー……リョ、リョーマ……?」
「オレのこと好き!?」
 噛み付くようにエージに問い掛けるとエージは一瞬何事かというような表情を浮かべたけど次の瞬間には倒れ込んだ体勢のままオレの体をぎゅっと強く抱き締めてきて

「そんなの当たりまえじゃん!!リョーマのこと大好きだよ!!??」
「………本当に?」
 念を入れるようにエージに聞いてみると頬に触れるだけのキスをされた。
 顔を上げて目を合わせるとエージの真っ直ぐで真剣な目がオレをじっと見つめていて一瞬どきっと胸がはずんだ。

「本当だよ?だってオレ、リョーマがいないと生きていけないもん」
「……………ん」
 エージの言葉にオレは頬を緩めて笑顔を作るとエージがまたぎゅって力いっぱい抱き締めてきた。

「本当に、ごめんね」









「…………ねぇ、いつまでそうやってるつもり?」








 抱き締めてきてくれるエージを抱き締め返していたらオレ達の背後から低い…というか明らかに怒ってますって感じの声が聞こえて来た。

「………不二先輩」

「仲直りしたのはいいけどさ。今は部活中だっての解ってる?」
 不二先輩の言葉にオレはエージの身体から顔を離し辺りを見回すとさっきまで練習していた他の部員の皆がオレ達のほうに注目を集めていた。

「…………あ」

 エージとはもるように声を漏らすと決まりが悪そうに眉を顰めて不二先輩の顔を見るとにこにこと表情は笑顔なんだけど……何か怖かった。

「乾………」
 不二先輩は比較的近くに立ってこっちを窺っていた乾先輩に声をかけると乾先輩は何だと言いながら不二先輩の近くまでやって来た。
「この間作ってた"アレ"今ある?」
「あぁ、あるぞ」
 そう言って乾先輩が取り出したのはドリンクを入れているボトルだった。

 ………中身が何とも形容しがたい色をしていたけど。

 それを乾先輩から受け取った不二先輩はオレの側にいるエージに向かって一層笑みを深めると手にしたボトルをエージに差し出した。

「な……何、これ?」
「"おしおき"越前君にしたことに対してこれくらいは罰を受けて貰わないとね」
 不二先輩の言葉にオレもエージも中に何が入ってるか即座に理解した。
「今回は自信作だ、飲んで感想でも聞かせてくれ」
 無理矢理不二先輩にボトルを押し付けられ真っ青になったエージに追い討ちをかけるように乾先輩がそう言い放つ。

「………おチビちゃん〜〜〜」
「……………死なないでね」
 半分泣きそうな情けない表情でオレに縋るように見てくるエージを一言で一掃する。

 だって、「甘やかすな」って言いたそうな不二先輩の微笑が怖いし、何よりここでエージをかばったりしたら下手するとオレまで飲むことになりそうだし。

 それと……オレもこれくらいは罰受けてもらわないと気がすまないしね…………。













「うにゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ……!!!」











 その日の最後はコート内にエージの悲鳴が響き渡ったところで終わった。











 オレをちゃんと構わないからこうなるんだよ。






☆謝辞☆
水無瀬 鮎さまのサイト【reverse×luck】改め【猫ノ方程式】にて、10000というカウントを踏ませて頂き、リクさせて頂いた一品です☆

「リョーマさんの知らない人と仲良くしている英二に不機嫌になるリョーマさん」と言うリクをこんな素敵なSSにして下さいました!
ありがとうございます!!

もう、英二に気付いて貰えないリョーマさんが辛くて、でも後半はリョーマさんに気付けなかったことを自己嫌悪する英二が辛くて……。
こう言う話大好きなんですよ〜VVv

本当に本当に素敵なSSをありがとうございました!!