Summer flower 作:水無瀬 鮎さま |
「おチビちゃん、今日の夜暇?」 部活も終わり、部室で個々に着替え早々に帰ろうとする者、部員同士で談笑し合う者で溢れ返っていた。 1年生の責務である片づけを終えたリョーマ達はその部室に戻ってくるとそれぞれ自分のロッカーに行き着替えだす。 その中、英二は既に制服に着替え終えて部室に戻って来たリョーマに近寄って行くと、リョーマの肩を指でとんとんと叩き様子を窺う。 英二に肩を叩かれたリョーマは首を回し、顔だけを英二に向けると後ろで落ち着かない様子の英二を見て不思議そうに首をかしげた。 「……暇……だけど、何かあったの?」 「うん、花火見に行かない?」 「はな……び?」 夜はとりあえず何もすることはないから暇だと伝えると英二は眼に見てわかるように表情を明るくする。 リョーマは着が得る手を休めずに英二の言葉を繰り返し口にする。 「そ、今日花火大会あるんだよね。で、おチビちゃんと行きたいな〜って」 「ふ〜ん………」 気の無い返事を返すと英二はだめ?と不安げな瞳でリョーマをじーっと強請るような眼差 しで見つめてくる。 その瞳で見つめられるとまるで自分が悪いことをしているような錯覚に囚われてリョーマは英二から目を反らすと顔をロッカーに戻し着替える手を早める。 正直、この暑い中外に出るのは気が進まないリョーマはどう返事したものかと悩む。 でも折角の英二の誘いを断ると絶対に拗ねるのは目に見えてわかる。 背後では未だに英二がリョーマを見てくる視線を感じリョーマはふぅとため息をつくと、制服の最後のボタンを留め、ロッカーからにもつを取り出すと英二の方にくるりと振り返った。 「別にイイっスよ………」 「ほんとっ!?」 満面の笑みで喜びを表す英二に内心苦笑しながらリョーマは結局英二に甘い自分にも苦笑 めいた笑みを浮かべる。 「じゃ、7時におチビちゃんの家まで迎えに行くから約束ね!!」 「はいはい」 そう言うと英二はリョーマにさっと左手の小指を差し出し、無理矢理リョーマの小指にも絡めるとゆびきりを交わした。 あの後家までいつものように英二と一緒に帰ったリョーマは英二に去り際にもう一度念押しをされ家の中に入った。 母親に夜の約束のことを言うと「やっぱり夏は浴衣でしょう!!」と言われ嫌がったのにも関わらず無理矢理浴衣を着せられてしまった。 それゆえ、今リョーマは淡い水色に青の模様がプリントされている浴衣に黄色に近い色の帯をされた浴衣姿になっていた。 意地でも脱ごうとしたのだが、それを母親に断固として阻まれ結局脱ぐことは叶わなかったのだ。 「おっチビ〜〜〜、迎えに来たよ〜ん!!!」 居間で脱力状態になっていたリョーマの耳に玄関からの英二の声が聞こえてくるとリョーマはしぶしぶといった様子で身体を起こし玄関へと出て行った。 玄関には私服に着替えた英二の姿があり、リョーマが出てきた姿を見ると英二は目を大きく見開いてリョーマの姿をびっくりしたように見た。 「おチビ………」 「何スか………」 「か……かっわいーーーーーーっっ!!!!!!!!!」 肩を震えさせたかと思うといきなり英二はリョーマに抱きついて思いっきり力をこめて抱き締めた。 英二に抱きつかれたリョーマは英二の身体を離そうとするが、英二はリョーマに擦り寄るようにくっついていて離れそうにもない。 「にゃんで浴衣着てるのー!?すっごい可愛いvv」 「母さんに無理矢理着せられたんスよ……って時間大丈夫なんスか?」 花火が始まる時間に遅れないかと英二に言うと英二はばっとすり寄せていた顔を上げ思い出したと言わんばかりに声を上げる。 「そーだった!!早く行かないと!!!」 そう言って英二はリョーマから離れると二人は家を後にした。 「ね、おチビちゃん。手繋ご?」 「はぁ……!?」 「だっておチビこんなに可愛いし、誰かに攫われないか心配だしさ〜」 「何言ってんの!?ばっかじゃない!!??」 「それに人ごみ酷いだろうから逸れないように……ね?」 リョーマは英二の言葉にぐっと詰まり差し出された手をしぶしぶ握ると英二は嬉しそうに微笑んだ。 「うっわ〜、やっぱり凄い人だにゃ〜〜〜」 花火会場の場所に辿り着くと、そこはもの凄い人で溢れ返っていた。逸れないように英二は繋いでいたリョーマの手をぎゅっと力を込めて握るとどこか花火が見やすい場所はないかと探し回る。 「あ、カキ氷!!」 探し歩く途中でカキ氷を売っているのを目にすると英二は声を上げて言った。 「おチビちゃん、カキ氷食べない?」 「奢ってくれるの?」 「いいよ〜、何が食べたい?」 「じゃあイチゴ」 リョーマが言うと英二はカキ氷が売っている所までリョーマをひっぱるように行くとイチゴとメロンのカキ氷を注文した。 カキ氷を手にした二人はその店から少し奥に行ったところで人が居ない場所をみつけるとそこで花火をみることにし、座ると買ったばかりのカキ氷を食べ始めた。 「うにゃ〜、シャリシャリしてて美味しい〜〜〜♪」 カキ氷を口に運びながら英二は嬉しそうに声を出す。 その隣に腰を下ろしたリョーマもイチゴ味のカキ氷を口に運びながら嬉しそうにしている。 ほとんど食べ終えてしまうと花火開始の時刻までもう数分になっていた。 「おチビ見てみて〜、舌が緑色〜〜〜!」 そう言ってリョーマに舌をべっと出して見せると確かにカキ氷のシロップのせいで英二の舌は見事に緑色に染まっていた。 そんな子供みたいなことをする英二にリョーマは呆れたように笑うと今度は自分の舌もべっと英二に見せるようにだす。 「オレのは赤くなってる?」 「ん、真っ赤〜〜〜♪」 と、そこで突然リョーマは顔に影が落ちたと思うと英二の顔が目の前にあり驚く間もなく唇を英二のものに塞がれ出していた舌を英二の舌に絡め取られる。 「んんん〜〜〜〜っっ」 舌を絡め取られ、口内を荒らされるように口付けられリョーマは息苦しそうに唇の間から声を漏らす。 ドンッッ………。 長い口付けを交わしていると花火開始され空には音をたてて大きな花火が上がった。 「あ、花火始まったね〜」 そこで漸くリョーマを解放した英二はぐったりと自分に寄りかかってくるリョーマを抱き締めながら空に上がった花火を見上げる。 「いきなり何する………のさ」 目を潤ませ頬も赤く染まったリョーマにきっと睨まれると英二はリョーマの額にちゅっと音をたててキスをするとリョーマの身体を反転させて後から抱き締めるようにして自分の前に座らせるようにする。 「おチビちゃんイチゴ味して美味しかったよ〜〜vv」 「ばっかじゃないのっっ……!!??」 リョーマが振り返って英二に文句を言おうとしたところで一段と大きな花火が真っ暗に染まった空に花を咲かせた。 「きれー………」 英二に文句を言おうとしたことなど忘れて、リョーマは夜空に打ちあがった花火に見入っていた。 夜空には赤・白・青・緑と多彩な色の花火が大小それぞれの大きさで上がり、様々な形を咲かせては消えていった。 花火に見入っているリョーマを後から優しく抱き締めると英二はリョーマの耳元に囁いた。 「来年も一緒に来ようね」 「ん………」 英二はリョーマの顔を少し上げさせると唇に触れるだけのキスを落とした。 来年も一緒に花火を見ようね。 |
☆謝辞☆ |
水無瀬 鮎さまのHP【猫ノ方程式】で配布されてました【暑中見舞いSS】を、強奪……もとい、頂いて来ました(^^) カキ氷を食べた後の舌の見せ合い……子供の頃は良くやってましたね〜Vvv 懐かしくもあり、可愛い二人にもうメロメロです(笑) 素敵なSSを、ありがとうございました! |