君と握手
「ねえ、おチビちゃん!」

 吐く息さえも白い、こんな寒い中で、スッカリ日も暮れた街中を、リョーマと二人で歩いていた。
 今日は、おチビちゃんは部活休みで(オレは引退してるからね)、二人で、デートに出かけたんだけど。
 調子に乗ってかなり遅い時間になってしまった。
 ともかく、中学生は家に帰ってないとヤバイような時間で。


 ――そんな中でオレは空を見上げた。
 歩道橋の上で、ビルの窓に映った金色の月を見つけて、両手を上げて三角形を作って、笑う。
「何やってんすか?」
「ほら! お月さま、捕まえてみたんだけど?」
「……――寒いっす……」
「あああ、ごめん!」
 寒いと言ったリョーマに、オレは慌てたように自分の巻いていたマフラーを巻いてやった。
 リョーマは変な表情で、それを見つめ、
「そう言う意味じゃないんだけど……」
 とか呟いていた。








「どうかしたの?」
「何がっすか?」
「あんまり、機嫌良くないからさ」
「いつも通りっしょ?」
「そうかな? オレにはそう見えないよ?」
「……」







 最近、オレは補習だ、進路相談だと、放課後も結構時間を取ってて、帰りも部活してるリョーマより遅くなることが、多い。
 だから、家に帰っても、ご飯食べてお風呂入ったら、10時過ぎてたりして、電話も出来なくて……。
 コミニュケーション? 違う、コミュニケーションだっけ? が足りない気がするんだよね。




 実際、今日は学校から帰る時から、あんまりリョーマは機嫌良くなかったし。


 言葉が足りなくて、リョーマが歯痒い思いしてるんじゃないかって思って。
 そう思うと、気が気じゃないんだよね?
 だから、そう言うときは、オレが「何で?」って、「どうして?」って聞けば良いんだって思ったんだ。







「……別に何もないっすよ?」
「……ちゃんと言ってよ? 言ってくれないと、オレも判んないんだからね?」
「……本当に機嫌は悪くないッス」

 リョーマはそう言って、歩き出した。
 オレは、どうしようかと迷う気持ちで、その後に続いた。












 リョーマと付き合いだして、半年近く経った訳だけど。
 喧嘩して傷付け合うこともたくさんあって。

 でも、最後まで何があっても忘れないで居ようと思った。
 リョーマと手を合わせること。
 握手して、気持ちを通い合わせることが出来ればいい。










「ねえ?」
「何?」
「疲れてる?」
「それは、エージの方じゃないの?」
「何で、オレが疲れるのさ?」
「勉強疲れ?」
「……何か馬鹿にしてない? おチビ……」
「別に……」
「そりゃ、英語の発音はあんま良くないけど、でも、後はそこそこ出きるんだから大丈夫なんだよ!」
 ムキになって言うと、リョーマはクスクスと笑った。
「あ、笑った!」
「はい?」
 不意に声を上げたオレに、リョーマはキョトンと目を大きく見開いた。
「オレ、リョーマの笑顔好きだから♪」
「……」
 とたんに、リョーマの表情が仏頂面になる。
 そんなリョーマに苦笑浮かべつつ、オレはリョーマの手を握ったまま、言葉を続けた。


「ね? 疲れたり、しんどかったら、いつでもオレのとこに来て良いんだよ?」
「……?」
「オレの隣で居眠りしたり、オレのこと呼んでくれれば良いから」
 オレの言葉にリョーマは大きく目を見開いた。
 リョーマの手をしっかり握り締めて……。
「もし、手が離れてもさ。離れ離れにならないように、最後まで忘れないで居ようね?」
「……」
「オレ達の……気持ち」
 リョーマの手と握手する形で握ると、リョーマも握り返して来た。
 その時のリョーマの表情は、しょうがないなぁって感じの笑顔。
 こう言う笑顔も大好きなんだ♪



 弾けるような――
 ――高鳴るような







 そんな気持ちが溢れて、オレはそのままリョーマを抱き締めた。
 このまま、二人の気持ちに溺れてしまいたいって思うくらい……。









「ねえ、おチビちゃん」
「何スか?」
「もし、傷付け合うことが、また起こっても、これ以上悲しまないように、最後まで忘れないでいよね?」
「……そうっスね」
 オレの言葉にリョーマは苦笑浮かべて、頷いた。

「おチビちゃん、大好きだよ!」
「……オレもっスよ。――……でも、今は早く帰りたいんスけど?」
「へ?」
 さっき、オレがリョーマの首に巻いたマフラーをオレの首に引っかけて、軽く自分の方に引っ張ると、そっと、リョーマの唇がオレの唇を掠めた。
「このままじゃ、二人とも明日は風邪引くかも知れないっすよ? 受験生にはlossでしょ?」
「……オレはともかく、確かにおチビが風邪を引くのはやばいよね! うん、帰ろう!」








「オレの方が風邪引いてもまだ、余裕あるんすけどね」
 どこか呆れたような、諦めたような……でも、いつもの声音でリョーマが呟く。
 オレは、それは無視して、手を繋いで歩き出す。










 白い息と、――街の明かりで星は見えないけど、ビルの窓に映った月を残して、オレ達は帰途についた。



☆あとがき☆

……何か味を占めたか私……
aikoの【あなたと握手】より……(^^;)
無理矢理こじつけてるとこが、たくさんありますね(−−;)

そして、これを菊リョ、リョ菊のどちらと思うか、是非聞きたいです。
ってか教えて下さい。



何か企画真似したみたいですね。(滝汗)
あうん;;
そんなつもりはないんですよ〜(><)
でも、あの、問題ありましたら、いつでも言って下さい;;
直ぐに、速やかに、削除致します(−−;)