体育祭

 6月の半ば……。
 梅雨の季節だと言うのに、青春学園は何故か体育祭が予定されていた(笑)

 第3週の日曜日。
 その日に向けて、体育祭の準備が全校で行われる。
 関東大会を終え、全国大会に出場を決めたテニス部員たちも、今は体育祭の準備に追われていた。

「体育祭って何?」
 日本の学校行事に疎い越前リョーマは、朝練を終えた部室で、誰にともなくそう問いかけた。
「何だよ、越前。体育祭知らないのか?」
「運動会とか、小学生の時にやらなかった? ずっとアメリカに居た訳じゃないんでしょ?」
「……かけっことかする奴?」

 かけっこ……(笑)
 あまりに可愛い表現に、その場にいたレギュラー陣の面々が、思わず微笑を浮かべる。

「そうそう。障害物競走とか、借り物とか。まあ、陸上競技とゲームをやるみたいなもんだよね?」
 リョーマの隣で着替えていた恋人の菊丸英二がそう明るく答えて、リョーマは興味なさげに、
「ふーん……」
 と呟くように言った。
「ウチの学校は、12クラスを2クラスずつ纏めて、6色に分けてチームを組むんだよ。1年から、3年まで縦割りでね」
「……1年から3年までの、1組と7組、2組と8組ってな具合にな」
 不二の言葉を受けて、桃城が補足する。
「……2組と8組?」
「おう! あ、そっか。オレ達、同じチームだなVv越前vv」
 リョーマの言葉に、桃城がどこか嬉しそうに(笑)笑みを浮かべて言った。
「……桃〜〜〜おチビに手ぇ出したら、どうなるか、判ってるよね〜?」
 どこからともなく、低い声でそう呟くように言う英二に、桃城が少し怯んだ。
「英二先輩……んなの、判ってますよ;;」

「なら、良いんだけど」
 ころっと声の調子を変えて、英二は言って、隣で自分を見上げて来るリョーマに問い掛けた。
「何? おチビちゃん」
「エージは?」
「へ?」
「エージは一緒じゃないの?」
「……う…オレ、6組だし……残念だけど、一緒じゃないね……」
「……ふーん。つまんないの」

 ポツンとそう呟いて、リョーマはロッカーの扉を閉めた。

 既に着替え終えていたリョーマは、バッグを肩に担いで、部室のドアに手をかける。
「んじゃ、お先っす……」

 肩越しに振り返ってそう告げ、リョーマは部室を出て行った。


 茫然とそれを見送っていた英二は、いきなり誰かに後頭部を叩かれた。

「イテ……?」

ポカ!
ポコン!
ボカ!
ボコ!

「な、何すんだよ〜??」

 それぞれに頭を殴られて、英二は抗議の声を上げて既に戸口に立ってる友人と後輩を見詰めた。
「……これくらい、当然の報いじゃない?」
 ニッコリと笑って(でも、目は笑ってない)不二が止めのように言い、英二はサーッと青褪めて、後退った。

「何、それ? まさか……みんなしておチビのこと……」

「「「「気に入ってるに決まってるじゃない(っす)か!」」」」

「ダメーーーーー!! おチビはオレのだかんね!! 誰も手を出しちゃダメーーーーーーっ!!!!」

 そう言って、英二はさっさと着替えて、部室を飛び出して行った。

 如何にして魔の手から、愛しい恋人を守ろうかと考えながら……。
 それでも、ポツンと呟いてくれたリョーマの一言に、笑みを浮かべながら……。


 晴れやかな気持ちで、教室に向った。

<Fin>

■何でしょうね? これは……(滝汗)
体育祭の組み分けは勝手に決めてます。
ただ、6月に体育祭ってのは、ファンブックを見て。
12組もあると、体育祭ひとつとっても大変ですよね?

期末試験もあるのに、いつ準備するんだろう?(笑)

リョーマさんアイドルってとこを出しましたが、英二の頭を叩いたのは、不二と桃以外は、ハッキリしてません。
カッコの数が人数とも限りません(笑)

まあ、その辺は臨機応変に(^^)

「つまんない」と「負けないっすよ?」とどっちにしようかと思ったんですけど。
英二が「おチビと一緒じゃないなんてイヤだーーー!」と喚かなかったんで。
ご褒美(激笑)