Time Lag

「あなたが、好きです」

 突然の告白に……。
 オレは一瞬、茫然とした。

 呆気に取られて、反応が返せなくて。
 気まずい沈黙が流れた。


 何か言おうと……口を開いた時。
 告白して来たあの子は、それを遮るように、言葉を紡いだ。

「冗談ッス……気にしないで下さい」
 そう言うなり、踵を返して、部室を出て行く。

 何となく、居残ってた……部活も終わって陽も暮れたそんな時間。
 ハッと……。
 おチビ一人で帰す訳には行かないと。
 慌てて、部室を飛び出した。

 でも、おチビの姿はどこにもなくて……走って帰ったことに気付いた。


 オレが追って来るかも知れないから?
 だから、走って帰った?



 冗談?
 嘘?
 本気?
 真実?



 正しいのは、一体どれなんだろう?
 そして、一番不可解なのは……。


 オレ自身の気持ちだった。
















 翌日。
 リョーマはいつもと同じだった。
 昨日の告白は、やっぱり冗談だったんだと……錯覚してしまいそうになるくらい……。
 いつもと同じ態度だった。



 元々、リョーマはポーカーフェイスは旨い。
 感情が態度に出ることもあるけど、隠そうと思えば、徹底的に隠し切ることが出来るだろう。

 そんなことも。

 その時のオレは気付いてなかった。



 何となく。
 昨日のことが、『なかったこと』になって、ホッとしていたのも事実で。

 このまま、いつもと同じ、毎日が続いて行くと思ってた。

 そう、信じて疑いもしてなかった……。



 あの日までは……。





















 リョーマに告白された日から、一ヶ月ほど過ぎた頃。
 その事実さえ、忘れていたオレは……自分の親友とリョーマの……そう言うシーンを見た時。

 激しい焦りに襲われた。

 酷く胸を突く焦燥感。

「……越前……。オレは、お前が好きだ」
「……なかなか、しつこいっすね、大石先輩……」


 呆れたような、でも、どこか嬉しそうなリョーマの声。



「粘り強いと言って欲しいな。そう簡単に諦められる感情じゃないんだよ?」
 苦笑を交えた大石の言葉。

 オレは、部室のドアノブを握り締めたまま、身動きが出来なかった。

 一ヶ月前。
 ここで、オレはリョーマに告白された。

 同じ、その場所で――
 リョーマが告白されている。


 自分自身を突き上げるような、激しい焦燥感と動揺は……隠しようもなかった。
 自分が何を期待してるのか、判って自嘲が漏れた。
 だから、踵を返してその場から逃げ出した。











『オレ、エージ先輩のことが、好きですから……大石先輩とは付き合えないっす』











 そう言って欲しかったなんて。









 自分の我が侭さに呆れ返って、情けなくって涙が出て来る。







 頬に……涙じゃない冷たい滴を感じて、目を上げた。













 ゆっくりと降り出した雨が――
 オレの身体を濡らして行く。

 雨脚は、どんどん強くなって。
 このまま。

 莫迦で鈍感で、どうしようもないオレを、消してくれれば良いのに……。
「本当っすか?」

 不意に聞こえて来た声に、オレは慌てて振り返った。

「……おチビ?」
「今の、本当っすか?」
「……え? 今のって……?」

 こんな時でも、誤魔化そうとする自分が、何だか憎たらしい。
 玉砕覚悟で、言ってしまえば良いのに……。




 でも、答えを貰うことが凄く怖い。



 あの時……。

 リョーマもこんな気持ちだったんだろうか?
 だから、答えないオレに……。
 募った恐怖が……。

 冗談で済まさせてしまったんだろうか?




 なら、オレのせいなんだ。


 リョーマが、想いを込めて告白してくれたのに、それに答えなかったオレが。
 全てを引き起こした……張本人で。




 なのに、言っても良いのだろうか?
 今更なこの想いを……。


 リョーマの手が、そっとオレの頬に触れた。

「答えて下さい」
「……」
「本当ですか?」




 真剣なその目に……。
 真摯な口調に。


 オレは、そのまま腕を伸ばして、抱き締めていた。



「好きだって言って良いの?」
「……当たり前じゃないっすか? オレは、本気でエージ先輩のこと好きなんですから」
「でも……冗談って言ったじゃないか?」
「……ああ言わないと、あなたが困ると思ったから……。あなたを困らせたくはなかった……」

 リョーマの手が、オレの背中に回る。
 力強く、抱き締めて来て、何だかとても安心出来て……。
 しみじみと思った。


 この子が好きだと。

 誰よりもこの子が好きなんだと……。


「リョーマ……君が好きです。オレと付き合って?」
「……勿論……もう、逃がさないよ? エージ」

 リョーマの言葉に、オレはなんとも言えない喜びを感じて頷いた。






 オレを見上げていたリョーマが、背伸びをして、頬を寄せて来る。
 オレが少しだけ膝を折って、屈んで見せると。

 リョーマの唇がオレの唇に触れた。


 その口付けに……無上の幸せを……オレは感じていた。


☆あとがき☆

変だな〜(滝汗)
これ、単にイラストにくっ付ける小文のつもりだったんだけど。
ってか、詩のようなもののつもりだったんだけど。

何か……SSになってるし、しかもリョ菊だし、
その上、ありがちな設定で、ありがちな結末……(滝汗)
いや、決して誰かのをパクった訳じゃないですよ?(あせあせっ)
設定上似てしまうのはしょうがないですよね?(ね? ね?)
いや、ほら、だから……
【告白されたけど、自分の気持ちが判らなくて、何も言えなくて、
そしたら他の人に告白されてるとこ目撃して、自分の気持ちに気付く】
って結構ベタなんだよね?(滝汗)


言い訳が見苦しい……(汗)


ってか大石先輩……ただの当て馬……。
(滝汗/好きなくせに、この扱い……;;;)



ああ、いつか大石先輩が報われる話を書きたい……。
ってか、元々は、これ大石×リョーマ←英二だったんだけど……。


いや、英二×リョーマ〜大石×リョーマ←英二になって、英二が振られる話だったのだ。
だから、TOPにあるイラストと全く同じなのに、書いてある文章が違うんだな。

そして、初リョ菊です。
ええ、これはどっからどう見てもリョ菊でしょ?

……どうだろう?(滝汗)

と、ともかく……これにて失礼!(脱兎)

しかもいつも以上、訳判らん……最近、多いな……そう言うの(ボソっ)