誰かが自分を呼ぶ声が聞こえる。
 でも、今が凄く気持ち良くて、答える気にならなくて、黙っていたら。

 次第にその声が遠のいた。
 そうしたら、何だか寂しくなって、閉じてた目を開けた。

 拡がる青空と、そこに浮かぶ白い雲。
 まだまだ寒いんだけど、でも、日の光は暖かくて。
 眩しくて、もう一度目を閉じてしまった。

 もう聞こえなくなった自分を呼ぶ声。
 それを探すように、もう一回ちゃんと目を開けて、オレは目を丸くした。

「良い度胸っすね。エージ先輩」
「おチビ?」
「このオレを無視するなんて……」
 ニッコリ笑ってるのに、凶悪に見えるのは、オレの気のせいだろうか?
「いや、別に無視した訳じゃ……」
「言い訳は家に帰ってからゆっくりと聞きますよ? エージ先輩」
「……うわああ;; おチビが怖い〜〜」
「人聞きの悪い。ほら、さっさと帰りますよ」
「あれ? おチビ、部活は?」
「何言ってんですか? 今週から期末テスト週間で、部活停止じゃないっすか」
「あ、そか」

 おチビが差し出す手を、恐る恐る(笑)握り締めて、その暖かさに、ちょっとホッとして。
 オレは立ち上がって、おチビと一緒に正門に向かうために歩き出した。


Your voice which calls me/リョ菊』