Trouble☆Maker Act.1雷の鳴る夜に…… |
その日は、朝から薄曇で何とも言えない天気だった。 遠くで聞こえる雷鳴が、その内、雨を運んでくるだろうと思うと気が滅入る。 そんなこんなでバイトに入り、いつも通りに22時にバイトを終えて、オレは22時半に店を出た。 降り出していた雨に、店の傘を借りて、自宅より近いマンションに向かう。 今日は、あいつもバイトで、いつも通り……。 そう、格別約束していた訳じゃない……。 ただ、いつもと同じように、マンションで会うことになる……筈だった。 物凄い光が空を走った。 と思った瞬間に、盛大な音が鳴り響く。 雷が鳴ってる時に外を歩くのは、色んな意味で危険な気がする。 別に怖くはないが、これだけ近ければ、音が煩くて、しかも夜だから稲光の光も鋭すぎる。 暗闇に一瞬の光は、はっきり言って驚くに十分だった。 人間に落ちることは稀だと言うが、取り敢えず……傘を差していることにも危険を感じつつ、マンションまで、後少しと言うところで……。 それまでで最高の稲光と雷鳴が響き渡った。 「……ありゃ、落ちたんじゃねえか?」 どっかの電柱かもしくは避雷針にでも……と考えた瞬間。 周りの家、外灯が消えて真っ暗になった。 「げっ!」 思わず傘を握り締めて、オレは立ち竦んでしまった。 基本的にオレは、暗闇が嫌いだ。 いや、暗闇が好きなヤツってそういないだろうとか思いつつ、それでも何とか足を踏み出した。 「……っひっ!」 口からついて出たのはまさに悲鳴。 息を飲んだ音が声になって漏れ出てしまった。 遊裏がいたら、思いっきり恥じだし、遊戯だったら、苦笑を憶えられ、海馬に見られたら一生虚仮にされそうだ。 だけど。 何か踏んだ! ……それなりに硬くて柔らかな……。 ったく、暗くて全然見えねえし、タバコを吸わないオレはライターも持っていない。 何がいるのか判らない状態で、動くに動けずにいると、強烈な光が空を走った。 「……っ!」 自分の直ぐ足元に、人が倒れていた。 続く、雷鳴はどこか遠くで聞こえて、オレは慌てて、倒れている相手の肩を掴んだ。 「大丈夫か? なあ!」 何度か揺さぶり、相手が軽くうめいて、生きていることを確認する。 ホッとしつつ、救急車を呼ぼうと立ち上がったところで、周りの明かりが戻った。 外灯が灯り、マンションの玄関の明かりも点いた。 オレは、心底からホッとして、マンションのエントランスにある公衆電話に向かおうとして、それから、倒れている人物を確認するために、視線を下方に向けた。 「……………………」 一瞬、自分の目を疑ってしまったのは、オレのせいじゃないだろう? だって、そいつは……あまりにも……。 奇天烈な格好をしていたんだから! 額に巻かれた青いバンダナはともかく。 肩から胸にかけての妙に分厚いこれは……肩当と胸当て? それから、足元まで続く真っ青なマント……。 ………………このご時世に、こんなマントを身につけているヤツなんざ、ついぞ見たことがない。 そして、何よりも目を引いたのは、腰にある細身の剣だ。 「……………………まさか、本物?」 冷や汗がこめかみを伝う。 救急車を呼んで、これが運ばれることを考えたら、背筋がぞっとした。 いや、何かの……そう、テレビか何かのロケで、もしくは、そう言うコスプレでもしてたとか……いや、でも剣が本物だったら? それなりに造りの良さそうな、この剣が本物だったら、それなりに『ヤバイ』ことになりかねない。 だが、額に巻かれた青いバンダナに滲んでいる血液が、雨に流されて広がっている。 よく見れば、腕にも怪我をしているし、放っとく訳には行かない。 「………………………」 どれだけそこで考え込んだのだろうか? オレは携帯を取り出して、一番、かけたくない相手に電話をかけていた。 他にどうしろってんだよ!?(悲痛な叫び) 願わくば、親友がヤツの傍にいることだけが、望みだったかも知れない。 「城之内くん!」 呼ばれてオレは、顔を上げた。 そうすると、小柄な親友がマンションのエントランスに駆け込んで来るところだった。 「よう」 オレは、そう声をかけて、作業に戻った。 とにかく、倒れている男を、エントランスまで運び込んで、怪我の状態を確認しつつ、応急処置をしていたのだ。 身体を纏っていたマントを取り除き、肩当と胸当ても外して、腰の剣も取り除いた。 それでも、時代がかった服装であることは否めない。 後、剣の重さが偽物よりも本物を想像させた。 「この人……なの?」 「ああ……」 遊戯も何とも言えない感想を持ったらしい。 「海馬くんが、病院の方手配してくれてる」 そう言って、遊戯が振り返れば、海馬の部下であるだろう黒服の男が二人こちらに歩いて来た。 その手に担架を持っているのを見て、用意周到なと半ば感心してしまったのだが。 「……」 運ばれて行く男を見送りながら、オレは少し迷ってエレベーターと出入口を何度か見比べた。 「遊裏くん、まだ来てないの?」 察した遊戯の声に、オレは首を振って、 「判んねえ。取り敢えず、電話して見るけど」 そう言って、携帯でマンションの電話番号をプッシュする。 誰も出ない留守番電話に切り替わった。 伝言を残して、電話を切り、次に遊裏の携帯に電話をしてみる。 だが、電源を切ってるのか、圏外にいるのか、繋がらなかった。 ――だから、オレは結局、遊戯と一緒に車に乗り込むことにした。 どうしても。 後の責任を遊戯に押し付ける形になることが、嫌だったんだ。 「別に、城之内くんが責任を感じることないのに……」 「そう言う訳にもいかねえだろう? 拾ったのはオレだし……」 「拾ったって……」 半ば呆れたような声で遊戯が言う。 「他にどう言う言い方があるってんだよ?」 そう言って、オレは肩を竦めつつ、苦笑した。 全く、同じ頃―― 遊裏が同じような人間を拾ったことなど、このときは知りもしなかった。 <続く> |
楽しいです! 書いてる私だけが楽しいのかも知れないこのシリーズ☆ 思い切りコメディテイストで。 ってか、幻水本編全然書いてないのにっ!!(><) しかし、雷と共にやって来る青雷は出来過ぎですかね?(激笑) |