Act.6 見えない真実


 宿を引き払って、街を出ようとしていたタオは、祭り見物の客たちが、騒然とした様子に目を丸くした。
 その中の一人を適当に捕まえて、問い掛ける。
「何かあったのか?」
「ああ! 闘戯場で決闘中だった召喚士が倒れて、そのモンスターが暴れてるんだってよ!」
 とばっちりは割りに合わないと、見物人が一斉に逃げ出し、ただでさえごった返していた通りは、まさに大混乱だった。


 警備についていたミレニアム・パレスの魔道士と領主の一小隊がそれぞれ、混乱を鎮めようと励んでいるが、上空に舞うモンスターとその攻撃の恐怖には敵わない。
 本来、召喚士のモンスターは召喚士が倒れた場合、消滅して(スパイラの中に戻る)するのだが、何故かモンスターたちは統制を失って、暴走を始めたのである。
 同じく、闘戯場周辺の警備に当たっていた召喚士たちが、モンスターに攻撃を仕掛けるのだが、ことごとく返り討ちに遭う有様で、人々はただ、その場から逃げるために必死だった。

「そいつぁー大変だな〜」
 ちっとも大変そうではない言い方でタオは言い、面白そうに笑って呪文を唱え始めた。
「混乱は飯の種ってね。放っとく手はねえよな」
 言うなり呪文を解放して空へと舞い上がった。
 そうして、闘戯場に向かって空を駆けたのである。





   ☆   ☆   ☆

 魔力の奔流は留まるところを知らないかのように、力を最初より弱めながらも渦巻いていた。
 その魔力の中に、ユーリが飛び込み、ユーギは悲鳴に近い声を上げていた。

「ユーリ! ユーリ!!!」
「ユーギ!? どうしたの? 何があったの?」
 その場を動けないエージが問い掛ける。
「ユーリが、魔力の渦の中に……っ!!」
「……っ!」
「なっ!?」
 克也の放つ魔力の余波は、力を弱めながらも、円を描く渦を拡大していた。
 ユーギは自身を守るための、防御魔法を維持しながらも、目の前で無謀なことを仕出かした弟に、小さな怒りを感じつつ、どうすることも出来ない自分に苛立っていた。
 エージとリョーマの二人の二重防御壁も、圧迫する魔力の強さに、精神を集中させていたのである。
 だが、ユーギの言葉に驚いた瞬間、少しだけ緩んだ。
「エージ! 気を散らしちゃダメだ!」
 自分にも言い聞かせるつもりで、リョーマが言った。
 エージは、頷きを返しさらに意識を集中させる。
 微かに、魔力を押し返し緩みが消え去った。
 だが、状況は一向に進展を見せていなかった。

「……? 何だ、ありゃ?」
 タオは、闘戯場よりも先に見えた、竜巻のように渦を巻く……それが魔力だと当然判った――それに気付きその場に止まった。
 そうして、その上空でブラックマジシャンが、モンスターを撃破したのを見て、それを使役している人物に気がついた。
「……ユーリがいるのか? だったら、何で……闘戯場の方に向かわないんだ?」
 闘戯場の手前で、モンスターを二匹ほどやっつけただけで、ブラックマジシャンは動かない。
 一体、何匹のモンスターを召喚していたのか。
 闘戯場の方では、未だにモンスターが暴れ、人々は逃げ惑っている。
「! ……ユーギ!!」
 その手前に、見知った存在を見出し、タオは急いでそこに向かって飛んだのである。




 渦巻く魔力の竜巻を見つめ、これ以上は近づけないとタオは上空で止まりどうするべきか考えた。
「何て魔力だよ? これが完全発動したら……この辺り一体焦土と化すぜ」
 呟いて、スパイラに手を当て、選び出した魔法を放つ。
『魔法を打ち消す結界!』
 奇しくもユーリと同じ手を使い、それは功を奏した。
 地面に描かれた六芒星が、その先端より白い光を発した。
 その光景にユーギが唖然として、上を見上げる。

「タオ? タオチェン?」
「よう! ユーギ! 久しぶりだな〜」
 そんな能天気な挨拶を返して、タオはユーギの隣に下り立った。
 ほぼ同時に、魔力の渦が収束して行くのが見えて、思わずタオは身構える。

 だが、その中にいたのは……。
 茫然自失の金髪の少年と。
 その少年を抱き締めて、肩で大きく息をついている、かつての先輩だった少年の姿で。
「そうか……タオ。お前の魔法だったのか?」
 ユーリはそう言って、克也の耳から手を放した。
 そこには、克也が自分で外したピアスが、再び付けられていた。
「ユ、ユーリ?」
 魔力の渦は跡形もなく消え失せ、ユーリと金髪の少年はそのまま地面に向かって倒れ込んだ。
「あぶね!」
 思わず、タオがユーリを支え、その向こうにいたエージが克也を支える。
「あんたが、ユーリとジョーイを助けてくれたんだ?」
「……そうなるのかね〜よく判んねえけど」
「……ありがと。俺はエージって言うんだ。エージ=アクロス」
「俺は、ウー=タオチェン。タオで良いぜ」
 挨拶を交わし、それぞれが二人を抱き上げる。
「どうする? 取り敢えず、支部協会にでも行くか?」
 タオの問いにユーギは答えかけて……闘戯場に目をやった。
「一体、何があったんだ? モンスターがあんなに暴走するなんて……しかも、一度に3匹以上も召喚してたなんて信じられない」
 実際、ユーリが意識を失った今、ブラックマジシャンはスパイラの中に戻っている。
 暴走する道理がないのだ。
「一つだけ可能性がある」
「え?」
「……ブレインコントロール……。あのモンスターを操ってるのは、倒れた元の召喚士じゃなくて、対戦相手の方かも知れねえな」
「……っ!」
 その手に思い当たって、ユーギは思わず息を飲んだ。
 だが、それでも理由が判らない。
 そんなことをして、この街を混乱に陥れてどうしようと言うのだろうか?
「まあ、最近は理由のない犯罪ってのも増えてっからな」
 タオがそう言って肩を竦めた瞬間。


 白い光が空を疾った。






『滅びのバーストストリーム!』






 高らかに告げられる声に、ユーギが嬉しそうな表情を浮かべる。
「セト!」
「げっ? ブルーアイズに乗ってお出ましかよ? 相変わらず派手な人だな〜」
「いつものことじゃん。……もしかして、タオはユーギやセトたちと一緒に居たの?」
「まあな。でも、俺は、パレスの中で地道に仕事するより、旅をしながら日銭を稼ぐ方が性にあっててな。んで、二年くらい前になるか? ミレニアム・パレスを出たんだ」
「……ほんとにすれ違ったんだね、俺もおチビも」
 そう言って、エージが後ろを振り向いた。
 つられてタオもそちらに視線を向ける。
「……リョーマ?」
 愕然と呟くタオに、エージは驚きを隠せずに目を大きく瞠っていた。




    ☆   ☆   ☆

 ブルーアイズの攻撃でモンスターを全て撃破して(笑)。
 セトは悠然と下り立ち、ミレニアム・パレスの支部協会の宿舎にユーリと克也を運び込んだ。
 成り行きでタオはそれに付き合うことになり、だが、どこか居心地悪げに、視線を彷徨わせている。
 対してリョーマは、あまり気にした様子もなく、いつもの通りに、飄々とエージと話をしていた。

「知り合いなの?」
「幼馴染み」
「え? でも、タオって……」
「うん。異国の人。俺がガキの頃に家族で、俺が住んでいた町に越して来たみたい。で、俺が8歳の時までよく遊んでた」
「……そうなんだ」
「でも、俺が8歳、タオが12歳の時に喧嘩した」
「は?」
「……それっきり。タオはミレニアム・パレスに行く前の日だったし、それから全然会ってなかった」
「何で、喧嘩なんて……」
「言いたくない」
 一言の下に言い捨て、リョーマはさっさと克也とユーリが寝かされた部屋に入って行く。
「何それ?」

 首を傾げながらエージもそれに続き、さらにタオが続いた。
 不意にリョーマが振り返り、タオを見上げて問い掛ける。
「何で、この街にいたの?」
「あ?」
「タオがこの街にいたのは偶然?」
「……どう言う意味だ?」
「……レッドアイズ捕まえたの、タオじゃないの?」
 リョーマの言葉に、ユーギとエージが振り返った。
「……何の話だ?」
「別に……違うならそれで良いんだけど……」
 意味深に言ってリョーマはエージの隣に向かった。


「ユーギ」
「セト? どうしたの?」
「お前たちのスパイラだ」
 そう言って、渡されたスパイラに、ユーギが軽く目を瞠った。
「仕事?」
「ああ……。闘戯場の後処理は、元々ここに派遣されていた奴らが請け負う……。奴らの失態だから当然だがな……。それとは別に……あの時の決闘中だった召喚士二名の内、暴走モンスターのマスターの対戦相手が行方を晦ませた」
「……じゃあ、やっぱり、原因はその召喚士にあるのかな?」
「それはどうか判らんがな。取り敢えず、もう一人の召喚士はここに収容してある。事情を聞いて、対戦相手の召喚士の捜索を頼みたい」
「……うん、判った……」
 ユーギが答え、リョーマはふと思いついたようにセトに視線を向けた。
「フジが来るまで、ユーリたちに着いてちゃダメ?」
「……好きにしろ。――この場の指揮はユーギに任せる。頼んだぞ」
「セトはどうするの?」
「これから王都に向かう。……この状況の説明と王女を送り届けねばならんからな」
「……そっか」
 小さく呟いたユーギの額に口付けして、セトは部屋に入らずにそのまま踵を返した。


「相変わらずだな〜ユーギもセトも」
 からかうようなタオの言葉に、ユーギは少し赤面して誤魔化すように言った。
「な、そ、そんなのリョーマとエージには適わないよ! こっちが赤面するくらい仲良いんだから!!」
「何でオレ達に振るの? ユーギ」
「でもでもホントのことじゃん☆ 俺は嬉しいんだけど?」
「……バカエージ」
 ニッコリ笑ってリョーマのことを覗き込むようにして見て来たエージに、頬を染めて憎まれ口で返す。
「もう、おチビちゃん、可愛い!!」
「だああ! もう、くっ付かないでよ〜重いんだから!」
「キスしていい?」
「……っ! 後でね。ここじゃヤダ」
「約束だかんね?」
「はいはい……大体、ユーリとジョーイがこんなことになってんのに、何言ってんだか……」
 至極尤もなことを言って、リョーマは溜息をついた。
 ふと視線を感じ、リョーマはタオの方に目を向ける。
「何?」
「……お前……そいつと付き合ってんの?」
「ああ。1年くらい前からね」
「何で?!」
 思わず怒鳴るように言ったタオに、リョーマが怪訝に問い返した。
「何でって?」
「だって、お前……」
「……言っとくけど。俺は別に”男だから付き合えない”って言った覚えはないよ? でも、当時俺はまだガキだったし、それに友達だと思ってた相手に、告白もされないまま、いきなりキスされたら、誰だって怒らないか?」
「……っ!」
「ええ? キスされたの?」
「5年前。それが喧嘩した原因」

 リョーマは嘆息して、
「俺がもう少し、恋愛ごとに興味持ってて、もっとちゃんと知ってたら、同じ振るにしても、もう少し言葉を選んだと思うけど」
「俺も……ガキだったからな……」
 タオは言い、吹っ切るように首を振って、苦笑した。
「どっちにしても振られてたんだな? 俺は……」
「……ごめん」
 リョーマが呟くように言って、タオは苦笑のまま首を振った。




「ん……」
 不意にうめくような声が聞こえた。
「ジョーイ?」
 リョーマがはっとしたように声をかける。
 うっすらと……。克也が目を開けて、何度か瞬かせた。



   ☆   ☆   ☆


「ここどこだ?」
「……セディスの街の【ミレニアム・パレスの支部協会】だよ。そこの宿舎」
 克也の問いかけにユーギが答えた。
「……何が、あったんだっけ?」
 ゆっくりと声を出して問い掛ける克也に、ユーギが丁寧に説明を加える。
「……っ! ユーリが?」
 ユーギの説明に、克也が驚いたような声を上げて、自分の隣のベッドに眠るユーリに目をやった。
「ん。ちょっとビックリした。幾ら威力がほんの少し弱まってたからって、あんなの無謀だよ……」
「その時のこと、ジョーイは何も覚えてないの?」
 エージの問いかけに、克也は少し決まり悪げに頷いた。
「ってか、ピアスを引き千切ってからのことはよく覚えてねえんだ。……何か頭がボーッとしてたって言うか……」
 だけど。
 たった一つ憶えているのは――

 暖かい……何かを感じたこと。
 言葉、想い……そう言う、暖かいもの……安心出来る……ぬくもりのようなものを。


(あれ……ユーリが?)



 自分に対して常に、事務的で無愛想だったユーリが?



「そう言えば……ユーリ、君のことを別の名前で呼んでた……」
「え?」
 リョーマがハッとした時には遅かった。
 ユーギは呟くように続けたのだ。
「カツヤ……とかって」
 ユーギの言葉に、克也の心臓が高鳴った。

「……あ……? か、つや?」
 頭がズキズキと痛みを訴え始めて、そのまま克也は前のめりに突っ伏した。
「ジョーイ?」
「いてぇ……頭……が割れそうだ……」



『この痛みを乗り越えてこそ、おまえの記憶は蘇る』
「誰……だ?」
『いずれ、必ず、ここに戻って来るだろうと信じていた。だが、この世界に来た瞬間に、おまえの記憶が消えるように施した。――全てを忘れても……それでも……選ぶなら……。おまえは……本当は……の……なのだから……』
「何言ってる? 判んねえ! 聞こえねえよ!!」
「ジョーイ? どうしたの? 大丈夫!?」
「ジョーイ!?」

 叫ぶ克也に、ユーギとエージが焦ったように声をかけた。

 ふと。
 その間を割るように、手が伸ばされた。

「ユーリ?」
 いつの間にか起き上がっていたユーリが、そっと克也を抱き締めた。
「考えなくていい」
「……!」
「何も、考えなくて良いんだ」
「ユー…リ?」
 自分を抱き締めるユーリに視線を向けて、克也は一瞬目が眩んだ。
 優しい声。
 暖かい腕。

 自分を……落ち着かせるに足りる……その心。
 克也は遊裏の腕に手をかけて、握り締めていた。

「……ピアス。もう外すなよ?」
 ユーリの言葉に、自分の耳に再び、ピアスが嵌められたことに気付いた克也は、溜息と共に頷いた。
「でも、じゃあ、どうするの?」
 エージの問いかけに、ユーリがキョトンと振り返った。
「だって、ジョーイは、魔力を持ってて、レッドアイズがジョーイのペンダントに入り込んだんだよ。そのまま放っとくの?」
「……それは、最長老たちに話を聞いて、ジョーイの魔力を加減して使えるようにすれば……。レッドアイズと正式契約も出来ると思うが……」
 そこまでしなくても、レッドアイズの入ったペンダントを保管して、新たに別に召喚士に引き継がせることも可能である。
 実際、エージの剣に入り込んだベビードラゴンは、そうして、エージから引き離す予定だったのだ。
 勿論、それは、モンスターの意志を無視する形になるのだが、そう言うことがない訳ではない。
「どんな絶大な魔力でも本人が自覚すれば、使いこなせるじゃねえのかな?」
 不意に聞こえた言葉に、全員がその声のした方を見返った。

 離れた壁に凭れていたタオが、頬を掻きながら集まった視線に多少引きつつ、言葉を続ける。
「だって、そいつ、自分の魔力(ちから)を自覚してねえんだろ? 魔封じのピアスなんて、そう言う……自覚とかコントロールが出来ない奴につけるもんだし。だったら、そいつが自分には魔力(ちから)があることを自覚して、コントロール出来るようにすれば良いんじゃねえの?」
「そんな簡単に行かないだろう? ジョーイは、この世界の人間じゃないんだ」
 ユーリの言葉に、タオは不思議そうに目を見開いた。
「関係ねえだろう? 要は……そいつに”自分にはこの街を破壊しかねないくらいの魔力がある”ってことを自覚させて、その上でピアスを外させて制御させりゃ良いだけじゃねえ?」
「そんな無茶な! 今だって、制御出来ないジョーイを止めるだけで精一杯だったじゃん!」
「……そりゃ、あれじゃねえの? そいつに自覚がなかったんじゃねーのか?」
「自覚?」
「……あんた、自分が魔力持ってるって自覚あったか?」
 タオの言葉に首を横に振る克也に、だろうなとタオは頷いた。
「自分でその力を自覚してれば、少しは違って来るんじゃねえか? オレらだって最初はそうじゃん? 自覚なくて暴走して、でも、その次からは何とかなった……」
「それは通常の魔力を有してる場合の話だろう?」
 ユーリの言葉に、タオは首を振り、
「想像を絶する魔力を持ってるって言うのは、周りからの比較によるもので、ジョーイ自身にはそれが許容量を越えてる訳じゃねえ」
「!」
「そうじゃなきゃ、ジョーイは今の段階でその身体が消し炭のように消えてるはずだ」

 ミレニアム・パレスに居た頃から、物事を他者と違う側面から見ることの多かったタオは、このときも他の者が考え付かなかったことを口にした。
 冷静に分析出来るのも、克也の事情を個人的に知らないからだろう。
 だからこそ、『余計な先入観』を持たず、客観的に判断を下すことが出来るのだ。
 この場合、情報として知っていても、克也が異世界から来たと言う認識は、タオには曖昧な訳である。
 実際に召喚されたところを見た訳ではないのだから……。

「そっか。保持できるってことは、使うことだって出来るってことだよね?」
「実際、今使っても、ジョーイは倒れはしたけど、身体は何ともなってない。倒れたのは魔力の使い過ぎに寄る精神的ダメージだし」
「強すぎる魔力に身体が保たずに火傷や傷になって現れるってこともないみたいだしね」
 エージとリョーマ、ユーギに一気に視線を向けられて、克也は居心地悪げにユーリを見遣った。
「……」
 難しい表情で腕を組んでいるユーリに、克也は不安げに問い掛けた。
「……オレが、魔力を使いこなして、パレスに残るの反対なのか?」
「……そうじゃない……」
 何か言いたそうに、だが言えずにユーリは目を伏せた。

 何とも言えない空気がその場を支配する寸前、かけられた声に、全員が振り返った。

「何だ、もうユーリもジョーイも意識を取り戻してるんだね」
 まるで詰まらないとでも言うような口調でフジが入って来て、場の緊張が一気に緩んだ。
「でも、一応……君たちはパレスに戻った方が良いね。精神力にガタが来てるのは確かだし」
 フジはそう言って、タオの方に視線を向けた。
「君も一緒に来て貰えるかな?」
「へ? 何で……」
 フジの言葉に、タオが目を丸くして、問い返すが、フジはそれには答えずに、ユーギに向かって言った。
「じゃあ、後のことは頼むよ、ユーギ」
「はい」
 頷くユーギにフジは笑って見せて、ユーリと克也、それにタオを連れて部屋を後にした。

 リョーマは、ユーギやエージと一緒に、収容されている召喚士に話を聞くために、別室に向かう途中、我慢出来ずに、踵を返してユーリを追ってその腕を掴んだ。

「リョーマ?」
 強く引っ張られて、ユーリはたたらを踏みながら、リョーマの方に引き摺られる。

 少し離れた場所で、リョーマは声を顰めて、問い掛けた。


「ユーリは何を知ってるの?」
「え?」
「ジョーイのこと……オレ達が知らない何かをユーリは知ってる。それは、ユーリがジョーイを知ってたことと関係あるんだろ?」
「リョーマ……?」
 問い返したユーリは、リョーマが驚きに目を見開いたのに、慌てたように振り返った。

「……ジョーイ」
「オレを知ってたって……どう言う意味だ?」


 額に手を当てて、舌打ちを漏らすリョーマと、ただただ茫然とするしかないユーリと。
 そんなユーリを、強い視線で見つめる克也と。


 事態は深刻な様相を呈していた。

<続く>